直流安定化電源PR18-3の導入

ACアダプタ電源だけだと実験に困ることが出てきそうなので,ついに中古の安定化電源を購入した.機種はKenwood PR18-3.所詮趣味のものなので,デジタル表示でなくアナログメータを搭載したものを選んだ. f:id:ikk775:20161218003536j:plain

何も考えずにヤフオクで注文してしまったのでけっこうボロい.不安になってカバーをはずしてみると次の通りで電解コンデンサの液漏れによるプリント基板の腐食がずいぶんと進んでいた. f:id:ikk775:20161218003940j:plain

とりあえず電解コンは交換しよう,ということで次の6箇所については交換を行なった.f:id:ikk775:20161218004426p:plain

このとき,はんだごてをはんだに当てると,はんだが電解液によって変質しているようで,ひどい臭いがするうえにきれいに解けてくれず,吸い取り線にも吸われていってくれなかった. パターンに関しては見た目にはそこまでひどくないので,そのままにしている.

とりあえずはこの状態で電源を入れると,それっぽい電圧が出力されているのが確認できた.ただし電圧の調整が一部でリニアでなかった.この機械の型番で検索してみると,これは出力電圧に応じて電源トランスのタップを切り替え,終段に掛ける電圧を調整しているらしい.(おそらく,基板右上の2つのリレーがその切り替えを行っている.リレーの右側の4つの端子が電源トランスからの入力になっている.)この電圧の切り替えがうまくいっていないのか,出力可変ダイヤルを速めに回すと,出力電圧の最大のレンジに切り変わるタイミングで定格を越えた電圧が出力されてしまっている.

当面はその電圧レンジを使う予定はないので,後でまた時間を見付けてここらへんの原因を考えて対策したい.

複同調バンドパスフィルタの試作

前にやった実験のメモ(測定日:2015/02/07)

概要

トロイダルコアの活用実験第一号として,28MHz-50MHzトランスバータの局発に利用できるバンドパスフィルタを試作する. また,ネットワークアナライザの試してみる.生基板の加工を練習する.

設計

基本的には「トロイダル・コア活用百科」8.2節による. トランスバータの局発には22MHzが必要なため,フィルタの中心周波数は22MHzとした.また挿入損失は6dBに合せて定数を選んだ.

計算値は以下の通りである.

項目 6dB損失 終値
中心周波数 f_0=22\,\mathrm{MHz}
コイル T-37-10 0.6\,\mathrm{mm}, 15\,\mathrm{turns}, 0.61\,\mathrm{\mu H}, Q=167
共振器 {Q} Q_L=160/2=80 Q_L=50
フィルタ Q_f Q_L/\sqrt{2}=56.568 Q_f=36.4
帯域幅 f_0/Q_f =440\,\mathrm{kHz} 604\,\mathrm{kHz}
共振容量 C_0 = 1/({(2\pi f_0)^2L})  = 85.79\,\mathrm{pF}
結合容量 C_c=C_0/Q_L = 1.2135\,\mathrm{pF} 1.666=5/3
設計Q Q_e=1/({(1/Q_L −1/Q_U)})  = 110.833 72.72
負荷R R_e=Q_e 2\pi f_0 L = 12049 6132
インピーダンス変換容量  C_{end} = 1/(2 \pi f_0 \sqrt{R_e R_L − R_L^2}) = 9.34\,\mathrm{pF} 13.118
補正した共振器容量 C=C_0−C_c−C_{end}=54.3553\,\mathrm{pF}

6dB損失の場合での実装上の問題として,結合容量が小さいという点が上げられる. 手持ちの容量で実現可能なように変更したものが表の右である.この場合,予想される損失は約3dBであった.

次に,容量などの大きさを丸めると,最終的に図のような回路図が得られた.

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シミュレーション

実装

生基板上に回路の実装を行った.

ZTTのネットワークアナライザで伝達特性を測定しながら調節を行うと次のようになった.

調整の段階では,2つの共振器がそれぞれピークを持ち,トリマーコンデンサを調整することによって移動する様子がわかり興味深かった.

得られた特性は表の通りである.

設計値 実測値
Q_u 160
Q_l 50 44.8
Q_f 36.4 31.7
BW 604 694
C_c 1.66 1.77
C_{end} 13.118 15
損失 3 2.2

おおよそ,設計値より広い通過帯域と小さい損失が得られた.これは結合容量が大きくなっていることが原因として考えられる.

まとめ

実際にトロイダルコアを巻き,生基板を加工してBPFの実装を行った.また,ネットワークアナライザを用いた伝達特性の測定も行った.

道具立てそれぞれの方法論を体験できたので,色々とトラバタの完成までやっていきたい.

6m 5/8波長GP?の試作

6m 5/8波長GP?の試作

目的

夏のシーズンに向け,50MHz帯のアンテナを整備する.マッチング部を持つアンテナを作製し,調整を体験する.

背景

部室の前に建てようとして失敗した10m 5/8λGPのリベンジということで,釣竿を使った5/8λの放射器とする.なぜ1/4λの接地形でないかというと,現在設置してあるマグネットアースシートが50MHz帯用になっていないということがある.また,ベランダ内部のラジアル線は他のバンド用に占拠されているので追加しにくいという事情がある.また屋根が近いため,基台から釣竿によって外へ突き出す形にする.

設計

だいたいの構造は図の通りである.各長さの値は設計値

灰色の部分が釣竿,右の黒いのがベランダの壁および基台である.釣竿が4.5m長であるため,ラジアルをエレメントの余裕だけ建物から離れてぶらさげることができている.
マッチングには同軸スタブを用いた.アンテナに対して直列に同軸が入り,さらに給電線との接続点で並列にショートスタブが接続されている.この形式のマッチングセクションはMMANAのオプションに計算機能があって便利だった.

作製の流れ

  • 所定の長さのエレメントおよびラジアルを用意する
  • 同軸aを長めに切断してコネクタをつける
  • アンテナと同軸aのみを設置し,インピーダンスを測定する
  • インピーダンスが期待される値に近付くまで同軸aの長さを調整する
  • 最終的なインピーダンスからマッチングに必要なリアクタンスを求め,ショートスタブの長さを計算する
  • スタブを接続し,SWRが小さくなるように調整する

インピーダンスの測定にはAA-170 アンテナアナライザを用いた.
各段階でスミスチャートにインピーダンスをプロットするとイメージしやすく便利だった.これにはMr. Smithを利用した.

実験の様子

シミュレーション時点での,同軸aの接続した場合のインピーダンスは1.24-j7.76Ωだったが,実際に作製すると3.1-j0.5ほどだった.このときに切断すべき同軸aの長さは,スミスチャート上で,シミュレーション時点でのマッチングの軌跡と,同軸の長さが作る円の交点をみて検討をつけたが,これが本当に有効かは考える必要がある.(図の3)

同軸aの切断は次の表のようになった.

行動 抵抗 リアクタンス 変化させる方向 推定される変化
目標 @50.5 1.24 -7.76
同軸スタブ1回目 3.1 -0.5 ながすぎ 0.495l (-0.005l)
2.5cm(0.006l)ほどカット 3.2 -1.7 まだながい 0.462l (-0.033l,13cm)
13cmほどカット,ちょっとまわす 2.7 -12

この時点で,ショートスタブに必要なインダクタンスは0.04uHほどと求められた.これの接続および切断によるインピーダンスの変化は図のようになった.

ここでマーカー1が初期インピーダンス,0と2から5が接続するスタブを調節したときのインピーダンスである.また,円は等SWR曲線である.

成果物

最終的に,アンテナのSWRは表のようになった.

50.100 50.400 50.500 50.750
1.48 1.06 1.12 1.48

想像より帯域幅はせまくなってしまったが,FMに出ないようならば十分そうな特性がえられた.

まとめ

なにはともあれ,6mに出れそうなアンテナができてよかった.少しスミスチャートとなかよくなれた気がした.想像よりはシミュレーションおよび設計値に近いような寸法で作製できてびっくりした.飛び具合に関してはロケーションの関係もあり,あまり期待できないが少しは出てみようと思う.

TODO

説明をましなものにする

追記

  • 釣竿をまわすだけでSWR特性がずいぶん変化する.左右に降るだけで中心周波数を上下できる!もちろん実験したセッティングでいちばん良くなるのはそうだが.