複同調バンドパスフィルタの試作

前にやった実験のメモ(測定日:2015/02/07)

概要

トロイダルコアの活用実験第一号として,28MHz-50MHzトランスバータの局発に利用できるバンドパスフィルタを試作する. また,ネットワークアナライザの試してみる.生基板の加工を練習する.

設計

基本的には「トロイダル・コア活用百科」8.2節による. トランスバータの局発には22MHzが必要なため,フィルタの中心周波数は22MHzとした.また挿入損失は6dBに合せて定数を選んだ.

計算値は以下の通りである.

項目 6dB損失 終値
中心周波数 f_0=22\,\mathrm{MHz}
コイル T-37-10 0.6\,\mathrm{mm}, 15\,\mathrm{turns}, 0.61\,\mathrm{\mu H}, Q=167
共振器 {Q} Q_L=160/2=80 Q_L=50
フィルタ Q_f Q_L/\sqrt{2}=56.568 Q_f=36.4
帯域幅 f_0/Q_f =440\,\mathrm{kHz} 604\,\mathrm{kHz}
共振容量 C_0 = 1/({(2\pi f_0)^2L})  = 85.79\,\mathrm{pF}
結合容量 C_c=C_0/Q_L = 1.2135\,\mathrm{pF} 1.666=5/3
設計Q Q_e=1/({(1/Q_L −1/Q_U)})  = 110.833 72.72
負荷R R_e=Q_e 2\pi f_0 L = 12049 6132
インピーダンス変換容量  C_{end} = 1/(2 \pi f_0 \sqrt{R_e R_L − R_L^2}) = 9.34\,\mathrm{pF} 13.118
補正した共振器容量 C=C_0−C_c−C_{end}=54.3553\,\mathrm{pF}

6dB損失の場合での実装上の問題として,結合容量が小さいという点が上げられる. 手持ちの容量で実現可能なように変更したものが表の右である.この場合,予想される損失は約3dBであった.

次に,容量などの大きさを丸めると,最終的に図のような回路図が得られた.

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シミュレーション

実装

生基板上に回路の実装を行った.

ZTTのネットワークアナライザで伝達特性を測定しながら調節を行うと次のようになった.

調整の段階では,2つの共振器がそれぞれピークを持ち,トリマーコンデンサを調整することによって移動する様子がわかり興味深かった.

得られた特性は表の通りである.

設計値 実測値
Q_u 160
Q_l 50 44.8
Q_f 36.4 31.7
BW 604 694
C_c 1.66 1.77
C_{end} 13.118 15
損失 3 2.2

おおよそ,設計値より広い通過帯域と小さい損失が得られた.これは結合容量が大きくなっていることが原因として考えられる.

まとめ

実際にトロイダルコアを巻き,生基板を加工してBPFの実装を行った.また,ネットワークアナライザを用いた伝達特性の測定も行った.

道具立てそれぞれの方法論を体験できたので,色々とトラバタの完成までやっていきたい.